偽王子と嘘少女



そのとき、主催者の女の子のケータイが鳴った。


彼女は、ケータイを持って、一回個室の外に出る。


ドアの向こうから、かすかに声が漏れている。


「…え? あ、そう……うん…あ、まじ!? …分かった……はーい」


話し終わったのか、それっきり声が聞こえなくなる。


すると、その女の子は満面の笑みでドアを開け、嬉しそうに言った。


「もう来たって!」


その一言で、私たちの口角も自然と上がり、玄関まで男子たちを迎えに行くことになった。


早く、早く会いたい…紫水くん。


尋常じゃないくらいに浮かれていた私は、そればかりしか考えられず、来れなくなった男子が紫水くんだなんて、思いもしなかった。