「希子…」 きっと、希子がいなかったら、私はここまで頑張れていない。 臆病なままの私だっただろう。 隣に誰かがいるということの暖かさを当たり前だと思ってはいけない。 日々の日常で、何度も思うんだ。 「それじゃあ、悲しみは歌い飛ばそう!ってことで、カラオケでも…」 言いかけた希子は、あれ、と一言、驚愕の表情でつぶやく。 「えっ…?」 希子につられて私も目を向けると、そこにいたのは、私たちがここへ来ることを知らないはずの…… 藤堂くん。