偽王子と嘘少女



だけど、紫水くんが何組なのか知らないし、どんなTシャツを着ているのかも知らない。


こんなんじゃ、手がかりはないのと同じ。


はあ…どうしよう。


なんて落ち込んでいると、2年生のフロアへ来たところで、希子が私にあるものを指差して見せた。


その先を目でたどると…


「あっ!」


いたのは、紫水くんだった。


青いTシャツを身につけ、忙しそうに店番している。


だけど、そんな姿も格好良い。


「いらっしゃいませ。3名様ですか? こちらへどうぞ」


近くへ行けば、聞こえてくる彼の声。


それは、いつものように透き通っていて、私の心を痺れさせる。