「はあ…き、緊張したぁ。恋人と間違われるなんて、初めてなんだけど」 胸の鼓動を抑えながら、回らない口で必死に話す藤堂くん。 「そんなの、私だって初めてだよ。そもそも男子と二人っきりでどこかへ出かけること自体、初めてなんだから」 「へえ…そうなんだ。よく、冷静でいられるね」 「冷静じゃないよ、そう見えるだけ」 きっと今は、地味バージョンのときの私が蘇って、表に喜怒哀楽があまり出ていないのもしれないかもしれない。 ときには、こうやって使い分けないとね。