偽王子と嘘少女



輪の中で笑顔を振りまいている彼の手を掴んで、奥へと歩む。


あんな人だかりが出来ていては、元も子もない。


「ちょっと待てって! なんだよ、急に…」


私のことをいきなり下の名前で呼んだこと。


完全に逆ナンされに行っていること。


明らかに決めてきていること。


それらは全て、モテるためにしていることなんだって、すぐに気付いた。


だからこんなにも怒ってるんだ。