藤宮美優(ふじみやみゆ)、高校2年生。

頭は良くもなく、悪くもない。

いたって普通。

身長158。

ストレートの黒髪はセミロング。

それが、私。



「美優ぅ!おはよう」

「ん」

朝から騒がしい学校の廊下で、一際目立つ女の子が私に手を振ってくる。


神上咲良(かみうえさくら)。

私と同じ高校2年生の女の子。

学校内でファンクラブができちゃうぐらい、かわいい。

明るい茶色に染めた髪を毛先でクルクル巻き、ふんわり横に流している。

めちゃくちゃ頭がいい。


「今日もクールだね、美優っち」

ニコニコ笑いながら私の隣を歩く咲良。

後ろには大量の男。

「……クールじゃないよ」

ちらっと男どもを一瞥して、私は応える。

「てか、アレどうにかして」

私は小さな声で咲良に言う。

「んー……。頑張ってはいるんだけど……。最近の男はめげないんだよね」

苦笑しながら言われる。

はぁ……。

毎朝毎朝、飽きないなぁ。

「男のくせに付きまとうとか、正直くそ気持ち悪いわぁ。なんなの?もしかして自分たちがキモイって理解してないの?どんだけバカなの?てか、そこまでくるとバカだけじゃ言い表せないよね?え、なに?ゴミ?粗大ゴミ?」

「ほんとソレ。まじこっちの気持ち考えてほしいよね。てか、ゴミとか言ったら可哀想だよ、ゴミが」

まず私が大声で男を罵倒する。

そしてそれに、咲良が便乗する。

こうして私たちは、いつも男たちを散らす。

大抵の男たちはこの罵倒で消えてくれるんだけど……。

「んー。やっぱり物陰から付いてくるか……」

バレないようにと、周りの男たちもそれなりに考えてくる。

いや、バレバレですけどね?

「やっぱ、咲良の人気は半端じゃないね」

私はしみじみと頷く。

「えー。全ッ然嬉しくないんですけど」

ガッと声のトーンを落として言う咲良。

こーわ。

何この子。

二重人格ですか?

「でも、あいつらの3割は美優目当てだと思うんだけどなぁ……」

ぼそっと呟く咲良。

「はぁ?」

私目当て?

ありえないって。

「てか、3割ってなに……」

なんとも喜びにくい数字だな……。

「ま、私自分についてくる男なんて、興味ないんだけど」

咲良が言う。

「てかさ、そんなことよりもっ!」

「うるさっ!」

耳元で急に叫ばないでよ……。

「美優。保健室の王子様って知ってる?」

……。

「なにそれ……」

どこのマンガの内容だ、それ。

「そんなの知るわけないじゃん」

保健室の王子様って……。

なんか寒いわぁ……。

「あー、やっぱり知らないか……。相当有名なのになぁ……」

ニヤニヤしながら言う咲良。

「何その顔。気持ち悪い」

「ひどくない?!」

ガーンと顔に縦線が入るぐらいの顔をする咲良。

「あー、はいはい。で、その保健室の王子ってなに?」

「あのねー……」