わたしのお母さんは、わたしがまだ11歳だったころに急に紀香の前からいなくなった。

自転車に乗っていて、トラックに跳ねられてしまったのだ。

──即死だった。

わたしはお母さんが大好きだったし、お父さんもお母さんもいつも幸せそうにしていたから…

新しいお母さんを連れてきたお父さんのことが──…

『わからない。信じたくない──』


それからわたしはお父さんとも口をきかなくなった。

向こうからはしつこく話しかけてくるが、そのお父さんの声さえもうっとおしく、めんどくさく感

じてしまう。