素直の向こうがわ




学校から歩いて10分足らずのところに河野の家はあった。

本当に普通の一軒家。
玄関のそばには大人用の自転車が3台に子供用の自転車が1台。それにあさがおの鉢植え。

そんなところが妙に温かかった。


「あんまり綺麗じゃないけど、入って」


そう言われて、私は今更ながらのことに気が付く。
玄関のドアを開けている河野の後ろで固まった。

河野の家ということは、河野の家族がいる。
私の姿は、自分で言うのもなんだけれどかなり派手だ。

こんな同級生を連れて来て、河野が親に怒られたりしないだろうか。
河野の信頼を奪うことにはならないだろうか。
河野の弟に怖がられないだろうか――。

どこをどうしても、もうこの場では直せない。


「なにつっ立ってんの?」


相変わらずの淡々とした声が私に向けられた。


「ご、ごめん」


どうすることも出来なくて、結局河野の後に続いた。