素直の向こうがわ




いちおう教科書は机に出す。
教科書や辞書なんかは全部教室のロッカーに入れっぱなしだから、持ってくるのを忘れるなんてことはない。

不真面目な私でも、英語のリーダーの教科書を開きはする。

変な髪形をした女が、七三分けの男に何かを話しているようだ。

その髪形があまりに不細工なので、髪をペンで書き足してやった。


「じゃあ、42ページを読んで、その後和訳を言ってみろ。そうだな……、じゃあ河野」


そんなことをしている私の横で、隣の席の眼鏡男がスラスラと英文を読み上げている。
それはそれは、帰国子女かのようの淀みない発音で。