夏休みが始まった。

本来なら遊びまくることの出来る季節。
でもこの夏はそういうわけにはいかなかった。
そう、一応私は受験生らしい。

遊び仲間だったはずの薫や真里菜が夏の講習に通うなんて言い出して、私も引っ張り出されていた。

校内で行われている夏期講習。
2人と一緒に、一番レベルの低い「基礎クラス」に参加していた。

やっぱり、まだまだ遊ぶためには大学には行きたい。
それが私にとっての唯一のモチベーションだ。

毎日、暑い中、私らしくもなく学校に通っていた。
真里菜や薫がいなかったら絶対にこんなこと続けられない。



その日の基礎クラス講習を終えて帰ろうとした時、真里菜と薫が申し訳なさそうな顔をして来た。


「ごめん。今日、ちょっと一緒に帰れないや。久しぶりにうちら、彼と会う約束してて……」


2人同時か。


でも、2人がそう言って来たのは久しぶりのことだ。
いつも私のことも考えてくれる2人には感謝しかない。
好きな人と会うのに罪悪感なんて持ってもらいたくなかった。


「そんな顔しなくていいって! 楽しんで来て。久しぶりでしょ」

「ありがとう。じゃ、また明日ね」


2人が私に気を遣わないよう明るい声で見送った。

とりあえず自分のロッカーに置きっぱなしになっている教科書を引き上げようと思い、教室に向かうことにした。