素直の向こうがわ



「俺がとりあえずこれはやるから。ちょっと待ってろ」


そう言う河野に席に押しとどめられた。
そして河野は神業のように、英語プリント2枚、古文1枚、日本史1枚のプリントを仕上げた。


「ほら、これ持っていけ。全問正解してるとアンタがやってないってバレるから、ちゃんと適当に間違えておいた。アンタの字がどんな字なのか知らないから、その辺は少し不安だけど」


真面目な顔してそんなこと言われると何も言い返す気になれない。


この男、遠足の時といい、今といい、生徒会長のくせに結構ズルするよね……。


「ありがと……」


受け取ったプリントを見る。
河野はああ言っていたけれど、そこにあった文字はどれも、先ほど河野が書いていた角ばった文字とは違うものだった。
自分なりに想像して少し文字を変えてくれたのだろうか。

そもそも私の字なんてどの教師もろくに知らないだろうし。
まともな解答を書いて答案を出したことなんてないんだから。

河野が代わりに解いてくれたプリントを手に、私は職員室に走った。