素直の向こうがわ



幸いなことに、それからすぐに期末試験期間に入った。
試験期間中は午前授業だし、席も出席番号順で座ることになる。
河野を視界に入れずに済んだ。


今回はいつも以上に勉強していない。
いつもだってほとんど勉強なんてしていないんだから、どれだけ酷いんだってことになる。

試験時間中、自分の解答用紙を見て、そのあまりの白さに引いてしまった。


周りの様子をうかがっても、皆真剣そのもの。
これから受験生の天王山、夏休みが始まるのだからそんなことは当たり前だ。

真里菜や薫でさえ、次第に受験生モードになっている。

将来の夢なんて当然ないし、学びたいことなんていう高尚なものもない。
だからって働くのも嫌で、適当に受験して合格出来そうな大学に入って、更に四年遊べればそれでいいと思ってる。

でも、これじゃあ合格出来る大学なんてどこにもない気がして来る。


高校に入学してまったく勉強しなくなって、中学時代の学力の貯金は高1の1学期ですべてなくなった。
後は石が坂道を転げ落ちるように成績は下がって行った。
私の人生の学力のピークは、多分、高校に合格した時だ。


「はい、そこまで」


試験監督の教師が声を張り上げる。


溜息を一つ吐く。

本当に、このままじゃやばいかもしれない。