(さっき、河野も言ってた通り、あいつが邪魔だっただけでしょ! 変なこと言わないで!)
そう素早く文章を打ち込み、怒りを表したスタンプを送り付けてやった。
河野が私を助ける理由なんてない。
それに……。
間違いなく、さっき航が言った言葉が河野の耳に届いたはずだ。
『文子だってそろそろ身体が疼いて来る頃なんじゃないの?』
もう一度その台詞が頭の中で響き渡り、私は頭を振る。
別に航があの場でそんなことを言わなくたって、いつもの私を見てればそれくらいのこと想像しているに決まってる。
とっくに、河野は私のことをそういう人間だって思ってるはず――。
必死にそう自分に言い聞かせる。
そう思えることで楽になれるような気がした。今更自分を良く見せようだなんて、そんなの手遅れだって。
私の意思にお構いなく勝手に動き出そうとする心を必死で抑え付ける。
でも、だめだった。
どんなに追いやろうとしても、河野にこんな自分を見られたくない気持ちになって泣き出しそうになる。
この場から逃げ出したくなる衝動に駆られた。
こんな気持ち、訳がわからない。
急に自分のすべてが恥ずかしくなって惨めになる。
授業中、河野の隣のこの席に座っていなければいけないことが拷問のように思えた。
消えちゃいたい……。
実際に涙が零れて来るわけじゃないのに、私はこの後の授業中ずっと俯いていた。



