「よう、文子。元気だった?」
離れたクラスにいる航とは、廊下でたまにすれ違う程度だ。こんな風にクラスにまで押し掛けて来るなんてもうずっとなかった。
「何? 何の用?」
私は、航の方は見ず目の前のお弁当箱を片付けながら冷たく言い放つ。
「つれないねぇ。また、遊ぼうぜ」
私の机の傍にしゃがみ頬杖をついて顔を覗き込んで来る。
明るい茶色の少し長めの髪に、耳には片方だけピアスをしている。
こちらを覗き込むその目にはカラコン。ホント、絵に描いたようなチャラさだ。
――だから、顔近いって。
私は大袈裟にその顔から離れた。



