「何言ってんのよ。彼との時間は彼との時間。それと同じくらいフミとの時間も大事なんだよ。私も薫もね。彼とじゃ出来ない女子トーク、楽しいし」
「ありがと……」
「そんなこと気にしなくたっていいんだからね。本当にフミは見かけに寄らず気を使うんだから」
私は結局、真里菜や薫の好意に甘えちゃってる。
申し訳なさと感謝とでしんみりしながらお弁当の残りのおかずを噛みしめていると、真里菜が不意に口を開いた。
「あれ、山下じゃない?」
その視線をたどると、あまり顔を合わせたくない男が教室へと入って来てこちらへ向かって来るのが見える。
その男の目的が私だと気付いた時、途端に気が重くなった。
それは、高1の時に一時期付き合っていた山下航(コウ)だった。



