『俺、医学部受かるまで絶対薫には手出さないから。だから、俺のところに戻って来て』
その彼の本気の思いに、嬉しかったのだと薫は素直に私たちに言った。
そんなストレートな言葉を薫から聞くことは滅多にない。
だからこそ、薫の想いの深さを知る。
誰かのことをそんなふうに想える薫が、急に大人に見えた。
「真里菜だって、洋ちゃんと上手く行ってるんでしょ?」
私が話題を真里菜に変えると、顔をくしゃっとさせて緩みまくった笑顔を見せた。
「まあね。洋ちゃんの勉強の邪魔にならないようにはしているけど、一日一回は会うようにしてる」
「それはそれは、ごちそうさま。でも、それならお昼休みだって、彼とお弁当食べた方がいいんじゃない?」
薫も真里菜もこうしていつも私と一緒に昼食を共にしてくれている。
それが、いつも申し訳なくて気になっていた。
受験生になって以前より会える時間が少なくなった今、お昼休みだって貴重な時間なはずだ。



