素直の向こうがわ



「ねえ、ねえ」


真里菜が私の肩を叩くので、そちらに視線を戻した。


「なんか、イイ感じじゃなかった? 相合い傘なんかしちゃって、河野とフミ」


そこにはニヤニヤとした顔が待っていた。


「な、何それ。そんなんじゃないって。あれは私が傘を持っていなかったから仕方なくで!」

「あんなに険悪だったとは思えないほど、二人並んでる姿がしっくりきてた」


薫までもがそんなことを言う。勘弁してほしい。そんなこと絶対にありえない。


「だから――」

「それにしても、河野。出来るオトコだね」


反論しようとした私の声を遮って真里菜がしたり顔で語り出した。


「フミがいなくて慌てて探しに行こうとした私たちを、俺が行くからって河野が制止して。フミが『海見たい』って言ってたこと教えたら、みんなであてもなく探しても余計に混乱するからってさ。あんな顔して実はフミのこと心配だったんじゃない? それでちゃんとこうしてフミを連れ帰って来るんだもんね」

「まあ、私たちの信頼は地に落ちてるから、任せられないっていうのもあったんじゃない?」


薫の冷静な意見に、きっとそっちが真実だろうと思う。