「いいんだよ。その代わり二人の話、ゆっくり聞かせてよ」
「フミ、ありがと……」
笑顔で返すと、少し薫もホッとしたようだ。
「じゃ、俺らは帰るから」
私たちがキャッキャと肩を抱き合っているところに眼鏡男の声が入り込む。
真里菜の傘に既に入っていた私は、その声で後ろを振り返った。
「……あ、うん」
半分だけ濡れた眼鏡男の背中を無言で見送る。
「河野君」
色白ひょろ男子がすぐさま眼鏡男に声を掛けていた。
「今回は本当にありがとう。河野君がグループに入れてくれたおかげで楽しい遠足になった」
「別に礼なんて言う必要ない。俺も、広岡のおかげで史跡に詳しくなれたし」
ふーん……。なるほどね。
あの色白ひょろ男子と、無表情冷徹眼鏡の組み合わせに違和感を感じた理由が分かった。
広岡とか言う男子、明らかにクラスで浮いていそうな雰囲気だったもん。
あぶれていた男子を眼鏡男は放っておけなかったということだ。



