素直の向こうがわ



駅の改札をくぐり、皆が待っているという広場に急ぐ。

あんなに激しかった雨は、小降りになっていた。重苦しかった空の色に少しだけ光が差し込んでいた。

駅を出るとき自然に差し出された傘に、今度は大人しく入る。

少しだけ近くなった距離。
アイツは相変わらずの無表情だったけど、もうそこに冷たさは感じなかった。

2人で一つの傘に入ったまま、待機していた先生のところに向かう。
そこから少し離れたところに同じ班の男子と、真里菜、薫がいた。


「遅くなり申し訳ありませんでした。このとおり松本も少し休んで回復したので心配ないと思います。な?」


すらすらと担任に報告している眼鏡男を他人事のように見ていた。
話を合わせろと目で訴え掛けて来る。


「だ、大丈夫」

「そうか。まあ、河野がいっしょだったなら安心だっただろ。全員揃ったから、もう解散していいぞ」

「はい。ご迷惑をおかけしました。では失礼します」


眼鏡男が礼儀正しく頭を下げる。

さすがの生徒会長ブランドだ。どれほど信頼されているのだろう。
担任にまったく疑う様子はない。


「松本、行くぞ」


既に歩き出している眼鏡男の後に慌てて続く。そして、ようやく真里菜達と合流することが出来た。

眼鏡男とともに現れた私に真里菜が駆け寄って来る。


「フミ! もう、どこ行ってたのよ。電話も繋がらないし心配したんだよ」

「ごめん、充電切れでさ」

「フミ、悪かったね。一人にしてごめん」


薫は、申し訳なさと安堵をごちゃ混ぜにしたような表情を見せた。