素直の向こうがわ



そんな私たちの前に、電車がホームへと滑り込んで来た。

それと同時に巻き起こる風に雨粒が混じる。
隣に立つ眼鏡男の左半身が、私と同じようにやっぱりずぶ濡れになっているのに意識が行く。
自分の濡れた髪や身体を拭くために取り出したミニタオルを手にしたまま動けなくなる。


「何してんの? 乗るぞ」


既に扉が開き、発車ベルが鳴っていた。


「分かってる」


慌てて眼鏡男の後に続き、電車に乗り込んだ。

車内は結構混み合っていたけれど、もう同じ制服を着た人間はいなかった。
集合時間を過ぎている何よりの証拠だ。