脳天突き破るんじゃないかというほどの鋭い音に、耳を塞ぎながら縮こまる。
一つ音が去っても、また来るんじゃないかという恐怖で立ち上がることが出来なかった。
しゃがみ込んだ私の身体に、アスファルトに叩きつける雨が間近で激しく跳ね返る。
耳に届く雷鳴の余韻と止まらない雨の音――。
怖い。怖くてたまらない。
怖いから目を瞑っているのに、真っ暗な部屋を思い出して余計に怖くなる。
激しい雨が、また私に胸の傷を思い出させる。
誰もいない無駄に広く暗い部屋で、ただ一人うずくまって怯えていた幼い私――。
突然停電になって、明かりが全部消えて、どうすることもできなくて、気が遠くなるほどの時間を暗闇の中怯えていた。
私は、雨の日が大嫌いだった。雨は優しいお母さんをどこかに連れて行ってしまうから。
そして、結局、母親が出て行ったのも、雨の日だった。
「おい」
すぐ近くから降って来た声で、我に返る。
高校生にもなって雷くらいでこれほどまでに怖がるなんて、恥ずかしすぎる。
こんな弱点、この男だけには知られたくなかったのに。
しゃがみ込んでしまった自分を、今更ながらに恥ずかしく思って顔を上げられない。
絶対、呆れたような、バカにしたような冷めた言葉が吐き出されるに決まってる。
「大丈夫か……? もう雷止んだぞ」
ほらやっぱり。『大丈夫か?』だって。
……って、え……?
声はいつもと同じなのに、眼鏡男の口から出て来た言葉が想定外過ぎて思わず顔を上げてしまった。



