素直の向こうがわ



不本意ながら隣を歩く眼鏡男は、今までにないほど近い距離にいる。

息遣いまで感じてしまいそうな距離で一緒に歩くなんてことあり得ない。

どうしても眼鏡男の間に隙間を作ってしまう。

傘を持つ眼鏡男の手の血管が浮き出ているのを見ては目を逸らしたりして、自分でも何がしたいのか分からない。

ただただ、こうして歩き始めてからずっと心が落ち着かなくてせわしなく胸が鼓動している。

すぐ隣に立ってみて気付いた。

背は高いとは思っていたけれど、本当に背が高い。多分、185センチくらいあるんじゃないか。

そして、意外に筋肉質だってこと。
勉強ばかりの痩せ男かと思ったていたら、引き締まった身体をしていただけだった。

無意識のうちに眼鏡男のことを観察してしまっていることに気付く。


なんなの、私!


一人で焦って、さらに眼鏡男から距離を取ってしまった。