「私がして来たことは消えない。私のせいで推薦なくなっちゃったことも変えられない。その事実に押し潰されて私は逃げた。でも、私が間違ってた。河野がもし許してくれるなら河野の傍にいたい。いさせてほしい。河野と一緒にいたい」


この気持ち、ちゃんと伝わってほしい。
逸らすことなく河野の目を見続けた。ただ河野へと真っ直ぐ。


「私馬鹿だから、そんな大事なことに気付くのにこんなに時間かかっちゃった。けど、これが本当の私の気持ち」


ただ一つ、嘘偽りない私の気持ち。


「河野のことが、好きなの。あの遠足の雨の日からずっと変わらず、河野が好き」


私の想い、全部言えた。
全部――。

次の瞬間、私は勢いよく河野に抱き寄せられていた。
きつく背中に手が回され河野の顔が私の肩に埋められている。


「……俺、大学落ちたんだぞ? そんな俺といたら、辛くなるんじゃないのか?」


耳元で聞こえる掠れた声。


「一緒にいられない方がずっとずっと辛かった……」


私は自分の腕を河野の広い背中に回しぎゅっと掴む。
それに応えてくれるように、河野がさらに私をきつく抱きしめた。


「本当は……。おまえのこと楽にさせてやりたかった。ちゃんと合格してホッとさせてやりたかった。その時はもう一度おまえのところに行って気持ちを伝えようって思ってたんだ。それなのに落ちてさ、俺、相当カッコ悪いだろ」


河野の声が私の鼓膜のすぐ近くで聞こえるから、その感情までもが手に取るように伝わって来る。
こんなにも弱々しい河野の声を聞いたことがない。
こんなにも、河野を近くに感じたことはない。


「カッコ悪くなんてない。私にとって河野は、いつだって最高にいい男だよ」


胸に感じる河野の鼓動が愛おしい。
この人の全てが愛おしくてたまらない。