だけど、どうしても河野が合格したことだけは見届けたくて。
そこに向かわずにはいられなかった。
薫の彼伝いに聞き出した河野が受験した大学。その後期試験の合格発表の日、私はそこにいた。
河野の受験場号も知らない。
そこに河野が来るのかどうかも分からない。
遠目からでも、河野の様子がうかがえれば。
ただ、それだけだ。
冷たい空気が少しずつ春の匂いを纏い出す。
もう次の季節へと移って行く。
どこにも動けないままの宙ぶらりんな私を置き去りに、否応なしに時間は進む。
掲示板の前に集まり出す人。
既に掲示されている番号を前にして、一斉に受験生たちが見上げる。
その人ごみの中に、あの背の高い眼鏡をかけた人の姿を見つけた。
番号をただ見上げるその姿を。
どんなに人が多くても、私の目は簡単にその姿を見つけてしまう――。
私は祈るようにその姿を必死で見つめた。



