素直の向こうがわ




式も終わり、クラスでの担任からの話も終わり、呆気なく卒業式は終わった。

まだ受験を終えていないクラスメイトや、そもそもこの日出席していない生徒もいた。
だからなのか、卒業式と言えどもどこかあっさりとしたものだった。

解散となった後も、ちらほら写真を取り合っている人たちもいたけど、みんなで涙を流しながらの別れという雰囲気でもなかった。

隠すことの出来ないほど涙の跡をつけているのなんて私くらいのもので、一人別の空間にいるよう。

今まで毎日のように見て来たなんてことない教室が、広々としていてよそよそしく感じる。もう私の戻ってくる場所ではないのだと思い知らされる。

荷物をすべて鞄に詰め終わった頃、私のスマホが振動した。


(私と薫は彼と予定あるからもう帰る。じゃあ、また春休みに会おう)


メッセージを読み終わって教室を見渡すと、既にあの二人の姿はなかった。

卒業式に3年間付き合って来た友人を一人にするってどうなの。

でも、あの二人にはまた会えるのだ。

だけど、河野とは――。

胸がぎゅっと掴まれたようにまた痛む。

何か、何かを言わなければ。

そう思うのに身体がまだ強張ったままだ。

このまま終わってしまっていいの――?


「松本」


その声に顔を上げると、すぐそこに河野が立っていた。