「それでも、人も時間も、同じ場所で止まっていることはできない。進むことしか出来ません。そうやって間違いや後悔を積み重ねて来た一日一日すべてが、今の自分を作ってくれました」
それはまるで、過去を悔いてばかりの私に向けられているみたいで、激しく胸が揺さぶられる。
「だから私は、そのどの間違いや後悔も否定したくはありません」
少しも揺らぐことのない瞳が、私の弱くてもろい心を包み込んだ。
私自身が後悔にまみれて否定しか出来ないでいた過去さえも、河野は『いいんだ』って言ってくれているようで、胸が詰まって締め付けられて苦しい。
そして、私と過ごした時間も意味あるものだったって言ってくれているようで、極まる感情は涙へと変わる。
全部全部、私の勝手な解釈かもしれない。
でも、次から次へと熱くて苦しい雫が零れ落ちて行く。
「ここで過ごした時間、出会った人たちすべてが私にとってかけがえのないものです。そんな三年間を共に過ごし、分かち合い支えてくれた先輩や後輩、友人たち。そしてそんな私たちを大きな気持ちで見守り、時には叱咤してくださった先生方に両親。それから――」
いつも、河野は私を支えてくれた。
空っぽだった私を変えてくれた。
そんなキラキラとした時間を私にくれた――。
「言葉足らずで自分を守ることばかりだった僕に、隣でいつも惜しみなく笑顔をくれた人に、『ありがとう』と言いたいです」
込み上げて来る嗚咽にどこもかしこも痛い。
ホントに、バカ……。
生徒会長のくせに、あんなところでそんなこと言っちゃって……。
馬鹿みたいに泣いてしまうから、一人懸命に心の中で悪態をつく。
「この先の人生でも、また間違えてしまうことがあるかもしれません。でも、ここで得たものすべてを胸に、これからも自分の信じる道を歩いて行く決意に代えて答辞といたします。 卒業生代表 河野徹」
それでも結局、広い体育館の中で、私はただただ肩を震わせていた。



