「冷たい空気の中にも春の兆しが見え始めたこの日、私たちのためにこのような厳粛で温かな卒業式を執り行って頂き感謝いたします」
河野の真っ直ぐな視線に胸が締め付けられる。
「入学した日から三年が経ち、今ここに立つ自分はあの日とは違う自分になっていると言えます。ここで過ごした時間のその分だけ自分を成長させ、変わっていくことができた」
意志を持った鮮明な声が体育館に響き渡る。
河野は今、どんな気持ちでいるのだろう。
一見無表情に見える河野の心の中は、とんでもなく温かいってことを知っている。
私にとって眩しくて、真っ直ぐで、一点の曇りもないまっさらな人。
そんな河野に落としてしまった汚点。
でも、今見上げた先にいる河野は、変らずに凛とした姿だった。
その姿を見るだけで、まだこんなにも胸が震える。
私の目に映る河野の姿、耳に届く河野の声――。
そのすべてが私を全部覆い尽す。
「未熟な私たちは、たくさんの間違いを犯し、後悔し、時には傷ついたりしながらこの学び舎で過ごしてきました」
河野の言葉が真っ直ぐに私の胸を貫いてゆく。



