素直の向こうがわ



(今度はあんたの番なんじゃないの? いくら河野の現実があんたにとって辛いからってこのまま逃げ続けるの?)


私はその場にしゃがみ込む。
スマホから聞こえて来る薫の声も、河野の言葉も何もかも私の感情をぐちゃぐちゃにしてしまう。

整理なんて出来ない。


(後期試験がまだ残ってる。少し、考えな)


一方的に切られた電話を床に転がす。


ただ、『河野が落ちた』という現実が私を押し潰そうとしていた。

心で響く薫の声から逃れたくて懸命に耳を押さえるけど、そんなことしたからと言って逃れられる訳もない。


あまりに抱えきれない現実から逃れようとしてか、私の心は石のように固まったままだ。


そんな私のままで、とうとう卒業式を迎えてしまった。

河野と会える最後の日になるかもしれないのに、学校に向かう足が前に進むことを拒否しているように重い。


どんな顔で河野に会えばいい?
何を言えばいいの?


強張ったままの身体で学校に向かう。