(フミ、聞いてる?)
身体中の全機能が停止したみたいに何もできなくなった。
声も出ないし、瞬きもできない。
何も考えられない。
ただ河野のことだけが浮かんでくるだけ。
でも、浮かんでくるだけで何も考えられない。
(文! なんで私がわざわざあんたにこんな報告したか分かる?)
どうして――。
どうして河野が落ちなきゃいけないの?
(フミ、しっかりして。今、一番辛いのは誰なの? それはあんたじゃない。あんたたちが別れてからずっと、一番辛い思いをしてるのはフミじゃないんだよ。河野だよ!)
スマホの向こうで薫が叫ぶ。
(河野に言われてたから我慢してた。フミにはもう何も言わずにそっとしておいてやってくれって)
そこまで言ってから、薫は一呼吸置いて静かに話し出した。
(私とまりなで河野のところに行ったことあるんだよ)
薫の言葉に息を潜める。
(このまま本当に別れていいのかって。フミは本当は河野のこと好きで、大事だからどうしたらいいか分からなくなってるだけだって。だから別れないでって)
そんなこと二人がしていたなんて知らなかった。全然……。
(そしたら河野が言った。フミが自分のことをどれだけ想ってくれてるか分かってるって。だからこそ一緒にいられないって言ってたよ。『もし落ちたら』って不安を抱え続けながら傍にいさせるなんて酷だって。フミも十分辛いはずだからもうそっとしておいてやってほしいって。河野はあんたのことしか考えてないの。どんなに自分が辛くたって!)
薫が感情的に訴えかけて来る話をただ突っ立ったまま呆然と聞いていた。



