素直の向こうがわ




年末年始は、ただひたすらに勉強した。
私の出来ることなんてこれくらいしかなくて。
河野と一緒に見つけた夢だから、なんとしてでも合格したいと思った。

今度こそ自分のために。


新学期早々、担任が思い出したかのように言った。


「そう言えば席替えってずっとやってなかったよな。学生生活最後の席替えするか!」


また一人盛り上がっている担任に、失笑が零れていることに本人だけが気付いていない。

高3の1月にそんなことを気にしている生徒なんていないってのに。
でも、ただ私一人にとってはそれはとても大きいことで。

これで本当に河野とは遠くなる。

6月に席替えをしたときは、本当に嫌で嫌で仕方がなかったんだっけ。

今となっては河野と一緒にいた2か月が夢のことのように思える。

当たり前のように全然違う席になり、お互い何もなかったかのように新しい席へと移動した。


それでも――。

どうしても時おり河野を見てしまう。
ちらりと盗み見る河野は、いつも無表情で。
あの頃の、ただ席が隣ってだけの時の河野だった。

もう私にそのしかめっ面を崩してくれることもない。
それどころかその目が私に向けられることもない。

そして、こうしてただ見つめることさえそのうち出来なくなる。

恐ろしくてその先を考えることは意図的に止める。

日ごとに迫って来る卒業のことは考えたくない。

だから、その代わりに私は祈り続けた。


河野が無事に医学部に合格出来ること――。


『誰かを助けることの出来る医者になりたい』


そう私に話してくれた河野を思い出して胸が痛む分だけ、ただ祈り続ける。