「『俺がおまえの寂しさを引き受ける』なんて言っといて、ごめん」
河野は俯いて最後にそう言った。
私がどちらにも動けないのを分かって、河野から振ってくれたんだ。
それが一番、私が楽になれるから――。
教室を出て行く河野の背中をただ見つめた。
あの日、薄暗い教室で、いつも隠していた自分の気持ちを河野に告げてしまった。
素直な自分になってしまった。
あの時、素直になんてならなければ、河野をこんなに苦しめなくて済んだのかな。
きっと河野は、ずっと苦しんでた。
私と向き合うとき、見たくない私を見ないように。
真っ直ぐでまっさらな河野だから、なおさらだ。
私に触れようとする時、いつもその手は何かをためらってた。
それでも私を傷付けないようにと、ほんのたまにだったけど触れてくれていたのかもしれない。
そんな河野の葛藤も知らずに、私一人が浮かれてた。
河野、ごめん――。
河野のいなくなった教室で、私は動けないまま立ち竦んでいた。



