河野が、あんなにも感情のまま気持ちを表してくれたのは初めてかもしれない。
本当なら、死ぬほど嬉しいはずなのに私は何も言えなかった。
さっきの、河野の表情がちらつく。
河野の不器用なキスの感触がまだ生々しく残ってる。
どうすることが正解なのか。
どうすれば良かったのか。
いくら考えても理屈と感情がせめぎ合って答えを遠ざける。
都合良くと言っていいのか分からないけど、すぐに期末試験が始まり河野と席は離れた。午後の授業もないからお弁当の心配もする必要がない。
私は怖くて、河野の方を見ることが出来なかった。
『俺はおまえと離れたくない』と言ってくれた河野から逃げ出した私に、河野もさすがに嫌気がさしているかもしれない。
いっそのこと、河野の方から振ってくれればどんなに楽かなんて考える私はどうしようもないほどに卑怯者だ。
目を合わせることも出来ず、それでいて完全に離れることを決断することも出来ずに時間だけが過ぎて行った。



