「どうして航を殴ったりしたのよ。私なんかのためにそんなことしないでよ。私みたいな馬鹿な女のために何やってんのよ!」
私はどうしようもないほどに心が乱れていた。
もし、河野が合格出来なかったら――。
もう何度となく思って来たことだ。自分を見失ってしまうほど、怖くて仕方がないのだ。
その時、私は一体どんな顔で河野の傍にいればいい?
気付けば泣き叫んでいて、そんな自分がどうしようもなく身勝手に思えた。
こんな姿を河野に見せたくなくて、逃げ出そうとしても壁に身体を押さえつけられた。
「松本!」
いくら逃れようとしても河野が私の手を壁に押さえつける力が強くて私を逃してくれない。
「河野だって分かってるんでしょ? 私が航と何してたか。何にも考えずに航としたよ。そんなの全然平気だったし。私がそんな女だって分かってるのにどうして私なんかといるのよ!」
「やめろ。昔のことなんてどうでもいいんだよ」
河野の声が遠く感じる。
河野を好きになってからずっと心に横たわっていた思い。
私じゃ河野には似合わないって。
自分でもずっとずっと感じてた。
でも、河野の隣にいるのが嬉しくて幸せで忘れようとしてた。
「どうでもよくないから、私に何もしないんでしょ? 本当は気にしてるから私の身体に触れようとしないんでしょ! もう河野の傍にいるの辛いよ」
もう苦しいよ――。
こんなこと言いたくなかった。
抱き締めてくれることはなくても、キスしてくれることはなくても、私は十分幸せだったし河野の気持ちは伝わってた。そんなのどうでも良かった。
どれだけ私を大切にしてくれてるか知ってたから。
「俺の気持ちは? おまえが傍にいないのが辛い俺の気持ちはどうでもいいのか?」
悲しげに揺れる河野の目を見ていられなくて頭を横に振る。



