「今日も用事?」
放課後、無表情の河野が私の前に行く手を遮るように立った。
「う、うん。そう。ここのところ先生にいろいろ相談に乗ってもらってて。ほら、私、選択している科目と受験科目全然違うでしょ? 今日も長くなると思うし河野は先に帰って。河野もいくら勉強しても足りないでしょ。じゃあね」
一方的に捲し立てて、立ったままの河野の横をすり抜けて教室を出た。
こんな風に河野を避け続けて一週間が過ぎた。
このままじゃいけないことは分かってる。
私は馬鹿な上に臆病者で。
逃げることしか出来ない浅はかな女だ。
図書室で1時間ほど時間を潰してから玄関へと向かった。
下駄箱で靴を履き替え外に出ると、冷たい風が頬を突き刺した。
もう季節は冬へと向かっている。
空の色はどんよりと重苦しい。
吹き付ける風に身を竦め歩き出した。
「おい」
その声に肩をびくつかせた。
恐る恐るその声の方に顔を向けると、校舎の玄関わきの壁にもたれて立っている河野の姿があった。
「な、ど、どうしたの。帰ってなかったの?」
一人取り繕うように笑顔を顔に貼りつける。
そんな私の表情を無視して、河野が私へと近付いて来る。
風が吹いて河野の目に前髪が少しかかり影を作っている。
次の瞬間にまた風が吹いて河野の前髪が揺れ、その目を露わにした。
その目は、悲しいほどに怒りに満ちていた。



