見た目を変えて、隣に河野がいてくれることで、私まで変われたような気になってた。
でも、見た目を変えたところで私の中身まで変わるわけじゃない。
そんな当たり前のことも忘れて河野の隣にいた。
勝手に自分までもいい人間になったつもりでいた。
だけど、本当はどうやったって私は河野に不釣合いだったのに。
「ご、ごめん。私ちょっと用事思い出して。先に戻ってるね。お弁当は食べて」
私は河野と視線を合わせることなく、一人バタバタと立ち上がる。
そして肩にかかるブレザーを脱ぎ河野に渡した。
「ごめんね、じゃあ」
ドクドクと激しく波打つ胸を押さえながら中庭から逃げ出した。
怖くて何も聞けない自分にも腹が立つ。
そしてこれまでのように振舞えない自分が怖い。
もう、どうやって河野の前で笑えばいいのか分からない。
帰りも河野が声を掛けて来る前に「用事がある」と言って先に帰った。
次の日のお昼は「もう外で食べるには寒いよね」と一方的に言って河野一人分のお弁当を手渡して私は教室を出た。
こんなことしても何の解決にもならないのに。
私はなんだかんだと理由をつけて河野を避けていた。
そのたびに向けられる河野の寂しげな目から、目を逸らし続けた。
河野の傍にいると、『もし、医学部に合格出来なかったら』って考えてその恐ろしさに震えてしまう。
もし、自分のせいで、河野の未来を変えてしまったら――。
あの夜の公園で河野が話してくれた。
『誰かを助けることの出来る医者になりたい』
そう言った時の河野の顔が目に浮かんで、その度に苦しくなる。
自分にのしかかるあまりに苦しい現実に、
耐えられなくて私は河野から逃げ出したんだ――。



