素直の向こうがわ




4日間の停学期間を終え、河野が登校して来た。

私が朝登校して来た時には、河野は何の変わった風もなくいたって普通に席に座っていた。

当然ながら周囲からの視線を感じているはずなのに、それをまったく表情に表さない。


「おはよう」


私に気付いた河野が顔を上げる。


「お、はよう」


つい、表情が強張ってしまう。

いつも以上に心を込めて作ったお弁当が私の鞄には入ってる。
私が何も言わなければ河野は中庭に来てくれるだろう。
でも、いざ本人を目の前にすると一緒に食べる勇気がしぼんで来る。


4日ぶりに河野に会えたのに、私の心は全然晴れ渡ってはくれなかった。
それでもやっぱり中庭に向かわずにはいられなかった。


「あれ、今日は早いんだね」


いつもは私が先に待っていることが多いのに、この日は河野が先にベンチに座っていた。


「ちょっとな。それより、早く座れば」


そう言って私を見上げる河野は、本当にいつも通りの河野だった。


「うん」


それとは反対にどんどんと硬くなる私。
聞きたいことだらけなのに、そのどれも直接言葉にすることが出来ない。


「美味そうだな。おまえの弁当、本当に楽しみにしてたんだ」


河野が嬉しそうに箸を握る。
そして「美味い、美味い」と連呼する。
そんな河野は、いつも通りというよりもむしろ、いつもより明るいような気がした。