素直の向こうがわ




河野が停学で学校にいない間に、新しい生徒会長に代わっていた。

その就任挨拶の時、例年なら旧生徒会長も挨拶をすることになっているらしいけど、河野がいない代わりに副会長の田中っていう人が挨拶してた。

一年間勤め上げた職の最後をこんな形で終わることになった河野は何を思うのだろう。


現役生徒会長が暴力事件を起こして停学になるなんていうのは、進学校であるうちの学校ではセンセーショナルな事件で。

その噂話には尾ひれやら何やらがくっついて、しまいには凄いことになってた。


『生徒会長が彼女を男に寝取られて、その腹いせに暴行をはたらいた』


うちの学校じゃめったにない下世話な事件の話題を、生徒たちは勉強の憂さ晴らしに使っていた。

もう一つの噂も耳にした。


『松本さんは真面目な生徒会長じゃ物足りなくて、遊び慣れてる山下と浮気した』だ。


周囲の視線は明らかに私を軽蔑してる。
そんな視線は慣れっこだけど、河野のことまで貶められるのは耐えられない。

そっと主のいない席を見つめる。

河野が学校に出て来た時のことを思うと、胸がギシギシと軋む。

そしてなにより、自分自身がどう河野と接すればいいのか答えが出ないでいた。