河野の家の前まで来た。
大好きな河野の家族がいる優しさのたくさん詰まった家。
そこで足が止まる。
それ以上動けなかった。
私が何を言える?
停学にさせて、推薦ダメにさせてごめんって謝る?
それとも、過去に航みたいな男と何も考えずにそういうことしてごめんって?
どんな顔して会えるというのだろう。
私は手のひらをぎゅっと握り締めて一歩後ろへと下がった。
会えるわけないよ。
今会ったところで、結果が何か変わるわけでもない。
何もこの現実を変えることなんて出来ないのだから。
振り切るように元来た道を戻ろうとしたとき――。
「あれ? 文子さん?」
玄関から出て来た声に呼び止められて、そちらを振り向けないまま立ち止まった。
「文子さんだよね? こんな時間にどうしたの? 学校は?」
動けないままの私の傍に、河野のお母さんが駆け寄って来た。
「ごめんなさい」
顔を上げることの出来ない私から出て来た言葉はそれだけだった。
逃げ出したいけどそれも出来なくて、必死で言葉を探る。
「もしかして、徹のこと心配で来てくれたの?」
あの目尻の下がった優しい顔で俯く私の顔を覗きこんで来た。
「あの、今回のことは全部私が悪いんです。だから、河野は何も悪くないんです」
河野が停学になったことで、きっと河野の家族も心配して悲しんでいるはずだ。
そんなことを今頃になって気付いて、私は慌てて顔を上げた。



