素直の向こうがわ



そして馬鹿な私は、次の日の学校で現実を知ることになった。


朝登校しても、いつも私より早く来ていた河野の姿はない。
クラスでもひそひそと河野の事件について話されていた。

そして私の方にも視線が向けられる。

無言のまま席に着くと、大声で自分の名前を呼ばれた。


「松本さん!」


その声に驚いて廊下の方を向くと、今にも泣き出しそうな脇坂さんの姿があった。
私はすぐにそちらへと駆け寄った。


「脇坂さん――」

「だから、言ったでしょ? あなたみたいな人認めないって」


廊下に出た途端に脇坂さんに強く腕を掴まれた。


「どうするんですか? 私、河野先輩のあんな姿一度も見たことない。全部あなたのせいでしょ? あなたが勝手に遊んでただけで河野先輩には関係ないのに。それなのに、河野先輩は停学になって推薦も取り消されて!」

「え……?」


停学? 推薦? 


一体、なんの話――?


上手く呼吸が出来ない。


「ちょっと、あんた、離しなさいよ」


いつの間にか薫と真里菜までもが廊下に出て来て、私に掴みかかる脇坂さんを押さえていた。


「推薦って何? ねえ、脇坂さん教えて?」


顔から血の気が引いて行くのが分かった。
心臓だけはそこにあると主張するように激しく打ち続ける。


「そんなことも知らないでいたんですか? 河野先輩は医学部の公募推薦を受けるために高1からずっと良い成績を取り続けて努力してた。それは河野先輩のお母さんのためでもある。早く確実に合格して家のこと手伝ってあげたいからですよ。ずっとずっと努力して来たのに、停学になんかなってもう推薦も受けられないんです!」


本当に私は馬鹿だ。