素直の向こうがわ



私たちの高校の集団が、集合場所であった駅前からいなくなったのを確認してから駅に戻った。
そして、そこから路面電車に乗り込んだ。

私たちの目的地は有名な観光地の一つ、小さな離れ島だ。島と行っても橋で繋がっていて気軽に行くことが出来る。


電車に乗ってからすぐ、真里菜のスマホが鳴り出した。
その着信音の大きさに、乗客たちの表情が一瞬ひそめられる。


「マナーモードにしてなかった」


私たちに言っているようで、周囲の人たちに弁解するかようにその声は少し大きい。慌ててマナーモードにしている。


「あ……、洋ちゃんだ……」


どうやらメールを受信したようで、その相手は真里菜の彼らしい。
前の日の夜にさんざん聞かされた彼とのいざこざ話を思い出す。

真里菜が食い入るようにスマホの画面を見ていた。


「これから班を抜け出して、2人で回らないかだって……」


そして呟くように真里菜が言った。


「え? なに、それ」


驚いたように、そして咎めるような口調で薫が聞き返した。