河野のお母さんは、一言で言うなら、そう、優しくて明るい人。
病み上がりでまだ痛々しいほどに痩せてはいたけれど、これまで長い間闘病生活をしていたとは思えないくらい明るい笑顔を見せてくれた。
「あなたが文子さんね。来てくれてありがとう」
玄関先で、かちこちに固まった私がぎこちない挨拶をすると、すぐに笑顔を向けてくれた。
「おい、いつもの元気がないぞ」
お母さんにくっつくように立っていた渉君が余計なことを言って来る。
「ちょ、ちょっと」
そこで大いに反論しようとしてやめる。お母さんの前だということを忘れそうになった。
河野のご両親、三兄弟と私とで食卓を囲んだ。
最初は緊張のあまりろくに食べられもしなかったけど、とにかく河野のお母さんが優しいから、気付くとその優しさに癒されていて自然とリラックス出来た。
そして、隣に座る河野が何度も「大丈夫」って目配せをしてくれて、肩に入っていた力を抜くことが出来た。
「姉ちゃんね、本当に料理上手いんだぜ。たか兄より美味しいかも」
渉君が嬉しそうにお母さんに話している。
「おまえ、その話何度目だよ。って、まあ、それは確かに事実だけど」
二番目の弟君、崇君の言葉に私は慌ててお母さんに言った。
「あ、あの、留守中に勝手に台所使わせてもらってすみませんでした」
「いいのよ。渉にお料理教えてくれたんでしょ? この子、それが本当に嬉しかったみたいで、今では私の手伝いしてくれるの」
そう言って微笑んでもらえてホッとする。
なんとか大丈夫だろうか。嫌われてはいないかな。
そんな不安は消えないけれど、この食事の場は本当に楽しくてすぐに時間が経ってしまった。



