素直の向こうがわ



行かない、なんて選択肢があるわけない。


「でも……。大丈夫かな、私、大丈夫?」


立ち止まり、手を広げて河野を見上げた。


「大丈夫。それに、今更繕ったところで無駄だ。渉がおまえのこと事細かに説明しちまってる」


河野が笑いをこらえるようにそう言った。


「な、なに? 事細かにって何よ。どうしよう、私、渉君に変なこととかしてないよね。河野のお母さんに嫌われたら、もう終わりだよ。絶望だよ。立ち直れないよ」


あたふたと不安を盛大に表した私に、河野が呆れたように私の頭に手を置いた。


「落ち着けって。大丈夫だから。俺がいいって言ってんだ。それだけでもう十分だろ」

「ば、ばか。何言っちゃってんの? そういうことじゃないのよ。母親のチェックはいろいろと厳しいの。世の中ではそう決まってるの」


今度は違う理由であたふたとする。


「ほら、もういいから行くぞ」


一人ぶつぶつ言っていると、突然手を取られた。


あ――。


手、繋いでる。河野が私と手を繋いでくれている。

初めて重ねられた河野の手は大きくて、私の手なんてあっという間に包み込まれた。

河野の掌から伝わる温もりで、嬉しさと安心感で一杯になる。

そして心に広がる幸せが私に勇気をくれた。