素直の向こうがわ




「あのさ、今日、うち来る?」


それから数日経った日の放課後、河野が少し言いづらそうに私を見た。


「え? うん、行くよ。でも、何? なんかあるの?」


いつものことなはずなのに、どこか言い方が違うことに気が付いた。


「実はさ、母さん退院したんだ」

「ほんと? おめでとう。良かったね!」


河野のお母さんが本当に元気になったのだと思うと私も嬉しい。


渉君、はしゃいでるだろうな。


「それで……。渉が余計なことを話しちまって、それで母さんがおまえに会いたいって言い出して」

「え?」


河野のお母さんが?


一瞬にして緊張が走る。


「いや、でも、別に無理に来なくていいから。よく分からないけど、そういうの緊張とかするだろ?」


河野が気遣うように私を見ている。


確かに非常に緊張する事態ではあるけれど……。


「行くよ。行く。もちろん行く」