「怒ってんの? 怒った顔もかわいい。おまえ、ホントに前よりずっとかわいいよ」
さらに顔を近付けられて囁かれる。
その息が頬にかかり、思わず顔を背けた。
でも、そんなことなんでもないことかのように航は言った。
「今のおまえ、たまんねー」
慣れ慣れしく肩を掴み、私の髪をすくい上から下へと指を滑らせた。
触れられた場所から鳥肌が立ち、反射的にその手を振り払う。
「ちょっと触れたくらいでびくついちゃって。おまえはそんなんじゃないだろ」
やめて――。
心が叫び出しそうになって俯く。
その時、椅子を引く大きな音が耳に届いた。
「悪いけど」
その声に身体が反応して顔を上げると、怒りを覆い隠すような冷たい表情をした河野が私たちを見下ろしていた。



