それからは、とにかく栄養学を学べる大学を必死で調べた。
「河野、大変だよ! 私、必要な受験科目の授業を取ってない!」
何も考えずに私大文系志望のための授業を組んでしまっていた私は、栄養学科の入試に必要な数学や理科の授業を全くとっていなかった。
「もうこうなったら仕方ないだろ。学校以外でやるしかねーよ。理科と数学なら俺、得意だし見てやれるから。とにかくやるしかない」
この日も中庭で二人でお弁当をつつく。
衣替えで着るようになったブレザーが肌に馴染んで来るように、私たちも二人でいることが少しずつ自然になって来た。
「もう11月になっちゃうっていうのに。浪人覚悟かな」
言ってみて恐ろしくなる。
1年間勉強だけの生活なんて私に耐えられるのだろうか。
「もしそうなったら俺がおまえの家庭教師になってやるよ。バイト代は、まあ多少はまけてやるから」
「あ……。バイト代取るなんてひどくない? 仮にも彼女でしょ」
今の河野の発言に一瞬言葉に詰まる。
卒業した後も一緒にいてもいいと言ってもらえたみたいで、一人嬉しさで泣きそうになる。
こうなったら絶対に管理栄養士の資格をとって、河野の勤務する病院に就職しちゃおうかな……。
そんなことまで一人で妄想を広げて、ニマニマと喜んでしまう。
将来の夢――。
そんなことを考えることさえなかった私に、今では目指したい目標が出来た。
誰かの健康のために、食事を研究したりメニューを考えたり、食事指導をしたりする責任者。そんな管理栄養士という仕事に巡り合えた。
私たちは、お互いがお互いの目標に向かって一緒に頑張った。
毎日のお昼の時間も、参考書を開きながらお弁当を一緒に食べる。
そんな日々が、私には輝いていて。
輝き過ぎて眩しくて、見えなくなっていたものがあったのに。
そんなこと考える暇もないほど、幸せだった。



