「ごめん。なんで泣いちゃうんだろう。やだな」
河野の言葉に救われていた。
長年凝り固まっていた自分の心が溶け出しそうで。
ここに河野がいてくれることが嬉しくて、温かくて。
涙が止まらず俯きながら必死で目を擦る私の頭に、ためらいがちな大きな手のひらが載ってきた。
そんなことをされたら余計に泣けて来るのに。
「おまえには一緒にバカ笑いしてくれる友達もいるだろ」
河野は、まるで照れを誤魔化すようにそんなことを言って来た。
「……うん、うん」
そうだよね。分かってる。
私は高校に入って一人じゃなかったってこと。薫と真里菜の笑顔が浮かぶ。
河野は私にいろんなことを気付かせてくれる。
私のそばにいてくれて、本当にありがとう――。
河野に傍にいてもらえる私は、最高に幸せ者だ。
優しい月明かりと河野の優しい手のひらが胸に沁みた。



