駅前のロータリーに出る前に、ベンチが一つあるだけの小さな公園がある。
そのベンチの側にある街灯とこの日の月の明るさで、夜の8時を過ぎていてもあまり暗さを感じなかった。
そのベンチにいざ並んで座ってみると、改まってしまって話題が見つからない。
必死に話題を探していると、河野の部屋で見た参考書のことを思い出した。
「河野って医学部志望なんだね。今日、河野の部屋で問題集見つけて」
「ああ、そうだよ」
「でも、どうして医学部? 医者ってそんなにいい仕事かな」
気付くと少し声のトーンが低くなっていて、河野が不思議そうに私を見ていた。
「いや、実は私の父親医者なんだよね。あの人忙し過ぎていつも家にいなくてさ。多分、それが原因でうちの親離婚したんだと思う。それでも、お母さんは優しかったんだよ。それなのに、あの人がお母さんを追い出した」
たまに父親が家にいても、ほとんど目を合わさない両親の異様な雰囲気は子供の私でも気づいていた。
そんな二人を繋ぎ止めておきたくて。二人が離れてしまわないようにすることが出来るのは自分しかいないんだって必死だった。
「壊れちゃいそうな家族を無理にでも繋ぎ止めるために、それと、もっと自分のことも見てもらいたくて、今はこんなだけど中学の時は勉強頑張ってたんだよね。二人に喜んでほしくて」
「ああ……。田中から聞いたよ。おまえ、中学の時、学年一の秀才だったって。それ聞いてからずっと気になってた」
「田中?」
不思議に思って聞いてみると、生徒会の副会長をやっている田中っていう人が私と同じ中学出身の人だったらしい。この前生徒会室で会った私の名前を知っていた人のことかもしれない。
「田中のこと知らなかった?」
呆れたように河野が笑った。



