素直の向こうがわ



「……この説明で分かった?」


すぐ横にある河野の顔が、問題集から私の方へと向けられた。
私に確認するように、眼鏡の奥の目が覗き込んで来る。その目はどこまでも混じりけのない目だ。


「う、うん。ありがとう。後は自分でやってみる」


慌ててそう答えると、河野の身体はすっと離れて行き元いた場所に戻っていた。

こんなに近くにいても、他に誰もいなくても、河野の手が私へと伸びて来ることはなかった。


全然違うのだ、河野は――。


蘇って来た過去の自分の記憶で、心に陰が射す。

目の前の河野が急に遠くなったような怖さと、本来なら自分は航側の人間なんじゃないかという思いが過って、ぎゅっと思わず目を瞑る。