右手と右足が同時に出るという変な動きで階段を上り、2階にある河野の部屋にぎこちない足取りで入る。完全なる挙動不審だ。
初めて目にする河野の部屋――。
部屋の真ん中に置かれたテーブル、本がびっしりと詰まった背の高い本棚、勉強机とベッド。それ以外にほとんど物はなかった。
無駄の一切ない部屋。
『河野徹の部屋を考えて描きなさい』という問いがあったとしたら、まさしく模範解答になりそうな部屋だ。
「何か飲み物持ってくるから、適当に座ってて」
私がぐるりと部屋の中を見回していると、河野が制服のブレザーを脱ぎながらそう声を掛けて来た。
河野が服を脱ぐ姿を初めて見た気がして、また一人ドキドキとする。
最近では、どんな姿もどんな仕草も、いちいち反応して見入ってしまう。
どれだけ河野のことが好きなんだろう。
河野が部屋を出て行って一人になると、本棚の傍へと行った。
どれもこれも難しそうな本ばかりの中、参考書や問題集も数多く並べられていた。
『医学部への物理』
『医学部合格のための数学』
そんなものが目に入る。
河野も医学部志望?
薫の彼のことを思い出し、そして自分の親のことを思い出し、少し複雑な心境になる。
「冷たいお茶しかなかったけど、それでいい?」
部屋に戻って来た河野の声で、慌てて私はテーブルの前に腰を下ろした。



