素直の向こうがわ




もしかして、私がいつも家で一人なのを知ったからなのかな。

ふとそんなことを思った。


「あの、でも、お母さんは? もう退院したの?」

「まだだけど、今月中には退院予定」

「そうなんだ。早く退院できるといいね」


渉君もきっと嬉しいだろうな。私まで嬉しくなる。


「じゃあ、勉強教えてもらう代わりに、また私に夕飯作らせてよ。真ん中の弟君も受験生なんでしょ?」

「そういうつもりで誘ったんじゃねーよ。夕飯くらいこっちで準備するから」


河野が慌てたように否定して来た。


「いいの。私もまた渉君と一緒に料理したいし。やらせてよ。いいでしょ?」


私が必死でお願いすると、河野は仕方ないといったように溜息をつきながら「分かった」と呟いた。